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公的保険の説明は義務化される?監督指針の改正内容を読み解き!

2021.11.25


 2021年10月15日、金融庁から「『保険会社向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)の公表について」という文書が発出されました。その主な内容は公的保険の説明の義務化。まだこの改正内容が正式に監督指針に加えられると決まったわけではないですが、保険代理店としても、証跡の管理やセールスプロセスの見直しなど様々な影響が及ぶ可能性は十分にあります。
 そこで本コラムでは、監督指針の改正内容とそれによる代理店への影響について読み解いて参ります。

監督指針とは?

 そもそも監督指針とは何なのでしょうか?金融庁のホームページには次のような説明があります。

(保険業)法は、保険業の公共性にかんがみ、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図り、もって国民生活の安定及び国民経済の健全な発展に資することを目的としている。さらに、高齢化・少子化の時代を迎え、保険は、社会保障において公的部門を補完する役割を果たすものとなっており、また、eリスク、土壌汚染リスク等新たなリスクの増大に伴って、企業活動等における多様なリスクに対応する手段としての機能が拡大している。
 このような状況のなかで、多様化、高度化する消費者ニーズに柔軟に応えられる商品開発、価格設定が行われる環境を整備することが求められる。また、保険契約者等が多様なチャネルを通して、適切かつ十分な情報に基づいて、保険商品を購入できる環境を整備することも求められる。そのため、業務上の規制・慣行を法の目的に照らし常に見直していくことが求められる。また、保険会社のコンプライアンスを更に徹底していくことが求められる。
 このような趣旨に基づき、本監督指針においては、保険会社及び保険グループ(※)の監督事務に関し、その基本的考え方、監督上の評価項目、事務処理上の留意点について、従来の事務ガイドラインの内容も踏まえ、体系的に整理した。
(※)「保険グループ」とは、保険業を行う子会社の経営を管理する保険会社又は保険持株会社及びその子会社等の集団をいう。

「保険会社向けの総合的な監督指針 Ⅰ-2 監督指針を巡るこれまでの経緯」から一部抜粋
https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/ins/01.html

 この内容を読むと、タイトルこそ「保険会社向けの総合的な監督指針」となっているものの保険代理店・保険募集人も含め金融庁の管理・監督の対象であり、保険募集において顧客本位のための行動をとっているか?を管理・監督することが目的であることがわかります。よって、この監督指針の改正は保険代理店にも大きく関係してくることと言えます。

何が改正される?

 では具体的にどのような改正が検討されているのか。改正案は下記の通りです。

また、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑みて、公的保険制度に関する適切な理解を確保するための十分な教育を行っているか。
意向把握・確認の方法については、顧客が、自らのライフプランや公的保険制度等を踏まえ、自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を適切に理解しつつ、その意向に保険契約の内容が対応しているかどうかを判断したうえで保険契約を締結するよう図っているか。そのために、公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行うなど、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、保険会社又は保険募集人の創意工夫による方法で行っているか。

「保険会社向けの総合的な監督指針 新旧対照表」から一部抜粋
https://www.fsa.go.jp/news/r3/hoken/20211015/20211015.html

 まとめると・・・
1)保険募集時は顧客に公的保険制度の説明をしっかりと行うこと
2)顧客自身が公的保険を理解した上で民間保険の必要性を理解できるようにすること
3)そのために募集人への教育を十分に行うこと
ということになります。

 公的保険制度の説明をただすれば良いわけではなく、顧客自身の理解・納得が必要という点は大きなポイントと言えそうです。説明した上で「公的保険は役に立たないから・・・」と一方的にリスク意識を煽って民間保険を提案するのは、顧客の意向を置き去りにすることになりかねません。

 類似の事例として「2人に1人ががんになる」と言って一方的に民間保険のニーズを強調したがん保険の提案は、年齢によるがん罹患率の違いを考慮しないデータの伝え方で、いわば情報提供不足の煽り営業であり課題ではないか、と2016年に金融庁が作成した金融レポートですでに取り上げられていました。

参考:週刊東洋経済plus「金融庁、保険販売の指針改定方針にざわつく生保」
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28799
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 このような事例を踏まえると顧客自身の理解・納得を置き去りにしないこと、そのことを何かしらの形で証跡が求められる可能性もゼロではないのでは?という見方もあるようです。

代理店にはどのような影響が考えられる?

 ここまでの内容を踏まえると、当局が代理店・募集人に求める姿勢として、そもそも募集行為は商品販売のためではなく、顧客自身の適切な判断のために行うべきであるということが見えてきます。
 その上で具体的には、
・募集人が顧客に公的保険制度の説明をしっかり出来るよう教育すること
・顧客自身が公的保険を理解した上で民間保険の必要性を納得すること
が求められています。

 今回の監督指針の改正案に対するパブリックコメントの募集は2021年11月16日で終了し、今後正式な内容が決定し次第、改めて監督指針が発表されることになりますが、例えば「顧客自身の理解・納得」については、意向把握等と同様に証跡管理の必要性についても議論が交わされているようです。
 顧客への説明実施の確認方法の他、募集人へ教育を行ったかどうかのエビデンスや募集プロセスの見直し(セールストークの統一化)、FD宣言の見直しなどにも大きくかかわってくるのではないか、と見る声もあります。

 そうした状況を鑑みると、代理店もある程度この改正案に沿って募集プロセス等の見直しに備えておくのが良さそうです。

 本改正に関する弊社代表 堀井の解説・見解については下記ブログからお読みいただけますので併せてご参考に下さいませ。

▼堀井計 ブログ
「保険業界人必見。『保険会社向けの総合的な監督指針』等の一部改正は業界や顧客にどんな変化をもたらすか」
https://kei-horii.com/2021/10/22/holos-173/

また、公的保険制度の知識のブラッシュアップ・学び直しに、一般社団法人公的保険アドバイザー協会さん主催のセミナーもお役立てください。
※弊社は公的保険アドバイザー協会の指定教育機関です。

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