ついに公開!生命保険協会スタディーグループがまとめた代理店業務品質基準について
2022.02.04
2021年12月に一般社団法人生命保険協会のスタディーグループから、保険代理店の業務品質評価基準(確定版)が発出されました。
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/pdf/d_2.pdf
保険会社によってバラバラになっている“保険代理店の評価基準統一化”を目指して設けられたスタディーグループ。そこでの協議・検討を経て公表された品質基準の内容は「顧客対応」「アフターフォロー」「個人情報保護」「ガバナンス」の4カテゴリの下、全部で210項目に渡ります。
この基準が設けられた背景や、今後どのように運用・活用されていくのか?をこのコラムでは解説して参ります。
生保協会のスタディーグループとは
そもそも「代理店業務品質のあり方等に関するスタディーグループ」は、代理店業務品質のあり方の調査・研究を目的として、保険会社や保険代理店、消費者団体や協会の顧問弁護士、金融庁などを委員として、生命保険協会内に2020年に設置されました。
▼生命保険協会 代理店業務品質のあり方等に関するスタディーグループ
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/
「顧客本位の業務運営」が重視されるようになって以来、保険会社による代理店の評価基準に、商品の販売量に加え、コンプライアンスや顧客対応といった品質面での評価が求められるようになりました。
その背景にあるのは保険代理店が、販売手数料の高い商品を優先的に顧客に販売しているのではないか?という金融庁からの疑念。そこで、品質が高い代理店は手数料も高くすることで、代理店の営業活動がより顧客本位に即したものになるように整備されてきました。そうした動きで保険会社各社が代理店の評価項目を公表するなかでいくつかの課題もありました。
・項目には顧客本位の業務運営に必ずしも即さないものも含まれてしまっている
・形式的な基準をクリアするだけでも評価されるようになっている
・保険会社によって項目がばらつき、特に乗合代理店は対応が多岐に渡り過ぎる etc.
そこでこのスタディーグループでは、代理店の業務品質の定義やその評価方法を明確にする、つまりより実効性の高い内容となるよう意見交換が行われてきたのです。
ついにまとまった「業務品質評価基準」の概要
2020年6月以来、20回の開催を経て、12月15日に業務品質評価基準の確定版が公表されました。その内容は「顧客対応」「アフターフォロー」「個人情報保護」「ガバナンス」の4つの大項目の下、なんと全部で210項目に及んでいます。
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/pdf/d_2.pdf
調査結果に関する概要は次の通り。すぐに210項目全ての達成が求められるわけではないものの・・・代理店の評価付け獲得の判定を申請する保険代理店が一定水準を満たすには、「基本項目」と「応用項目」のうち全部で150項目ある「基本項目」については、全て達成することが必須となるようです。
○業務評価品質基準とは、代理店の業務品質を判定するものであり、各代理店が、規模の大小に関わらず業務品質評価にふさわしい各項目の評価結果の向上を目指すことで、業界全体の顧客本位の業務運営の推進を図ることを目的としている。
○また、これまで設問を3段階(P/D/C・A)に区分していたが、業務品質評価基準の精緻化を図る中で、PとDの設問の境界線が不明確であることおよび一般的なPDCAの考え方と乖離していることから、P/Dに区分していた項目を顧客本位の業務運営における基本的な取組み=「基本項目」、C・Aに区分していた項目を代理店の創意工夫により他代理店との差別化を図る取組み=「応用項目」と定義付けを行うことで 2 段階に集約。
○あわせて、業務品質評価基準を活用した代理店の評価付けについて、運営開始当初は「基本項目」を全て達成することで“評価付け獲得”となることを決定。
○代理店の評価付け獲得の判定を行うにあたり、代理店の業務品質評価基準に関する詳細な取組みの把握が必要であることから、代理店が達成状況を申告するためのツールである「評価申告シート」を策定。
[下記から一部抜粋]
業務品質評価基準・業務品質評価運営についての調査・研究結果(2021年12月23日)
・概要
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/pdf/d_1.pdf
・乗合代理店における業務品質評価運営について
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/pdf/d_3.pdf
評価基準の内容・特筆すべき点
内容は多岐に渡りますが、特徴的なものをいくつかピックアップしてみます。
No.1 | 顧客対応 | 意向把握プロセス等の事項がルール化され従業員がいつでも閲覧可能な状態になっている |
No.18 | 顧客対応 | 顧客意向と提案内容が合致しているかを検証する主体が営業部門からの独立性を確保した担当部門・担当者である |
No.74 | アフターフォロー | 代理店自らお客さまに対し能動的なアフターフォローを行っている |
No.78 | アフターフォロー | 苦情について申出内容・対応履歴を記録するとともに対応もれが発生しない態勢(チェックリストや自社役席者による確認等)を整備している |
No.96 | 個人情報保護 | 個人データ管理台帳による管理を行い、定期的な棚卸(新たな個人データの追加、保有期間経過後に廃棄・削除)を実施している |
No.177 | ガバナンス | 教育責任者を適切に配置し、変更があった場合には都度保険会社に報告している |
2021年12月23日 業務品質評価基準・業務品質評価運営についての調査・研究結果(詳細)
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/pdf/d_2.pdf
例えばNo.1の「従業員がいつでも閲覧可能」は、テレワークを導入している場合、その社員も含めて閲覧できるようにするには電子データでの管理が必要となってきたり、アフターフォロー(No.74・78)についても顧客への保全対応の履歴を残したり能動的にフォローできるようスケジュール管理をしたり、と言ったことが求められるようになると考えられます。
また、No.18のように、実行者とチェック者を分ける体制を取ることで、より顧客本位を実現するためのPDCAの実効性が高まるようにしていることも読み取れます。
この評価基準はどう運営される?
この評価軸の運用は令和4年度から開始されることになります。対象代理店:生保乗合代理店のうち、本運営を希望する代理店
・調査対象:年間150~200社程度
・調査方法:オフサイト(書面)+オンサイト(訪問)
・代理店は申込前に「基本項目」が全て達成できているか自己チェックを行うこと
・調査の結果、一定水準を満たした代理店は生保協会のホームページに掲載される
(1)対象代理店
対象代理店は、生保乗合代理店のうち、本運営を希望する代理店とする。
調査の対象は、年間150社~200社とする。なお、運営初年度については、下期から運営を開始となり、調査期間が短くなるため年間100社が上限となる。
(2)選定方法
生保協会HP等を通じ、原則、年1回、本運営参加のための申込機会を設け、希望する代理店は、申込を行う。
申込み代理店が200社を超えた場合、業務品質や顧客接点の多寡などの観点からスクリーニングを行い、調査の対象を決定する。この場合、その旨を、生保協会HPに公表する。
なお、本運営の申し込みにあたっては、代理店に対し30万円の負担を求める。
(3)スケジュール
2022年4月 | 代理店向け運営要領好評、申込み受付開始(生保協会HP) |
2022年5-6月 | 申込〆切、申込み状況に応じた運営内容の確定・公表 |
2022年7月 | 調査実施代理店の決定、調査日の決定通知 |
2022年9月頃~ | 調査を順次開始 |
2023年3月頃~ | 評価の結果を公表予定 |
[下記から一部抜粋]
乗合代理店における業務品質評価運営について
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/pdf/d_3.pdf
業務品質評価運営の開始に向けて
https://www.seiho.or.jp/data/billboard/agencyqualitysg/pdf/21_1.pdf
なお、申込みが200社を超えた場合の選定基準は “業務品質や顧客接点の多寡などの観点からスクリーニングを行い、調査の対象を決定する” とありますが、具体的には募集人数が多い順に調査先が選定されます。一定の規模を持ち、かつ「基本項目」をクリアしているということは、しっかり組織化されていて、それにより顧客本位の経営も安定して行うことが出来る、という基準のようですね。
まとめ
この評価運営の目的は、代理店が「業務品質評価基準」の達成を目指すことを通じて、業界全体の「顧客本位の業務運営」を後押しすることにあります。そのため、一度審査を受けて通過したらそれで終わり・・・ではなく、定期的に更新調査を受けることで継続していくものです。評価の認定を受けたり、生保協会のホームページ等で「認定代理店」として公表されたりすことで、すぐに売り上げに繋がるわけではないかもしれませんが、そもそも「顧客本位の業務運営」を実現し、それが顧客の満足度に結びつくまでには時間がかかるものです。中長期的に消費者からの信頼を得て、その結果、消費者が安心して相談できる代理店になることを信じてチャレンジしていく価値がある、と言えそうです。
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