いまさら聞けない?代理店業務品質評価運営とは(事例付き)
2024.02.07
生命保険協会が主導している「代理店業務品質評価運営」。
協会が生命保険乗合代理店を対象に業務品質を一定の基準に沿って調査・認定していく取組みで、2022年度の制度スタート以降、じわじわと注目度が高まっています。
そこで改めて、
・どのような内容・取組みなのか
・そもそもの背景や目的
・認定を目指す上でのポイント
について紹介・解説して参ります!
代理店業務品質評価運営とは?
そもそも、代理店業務品質評価運営はいったい何なのか?というと、生命保険協会のホームページでは次のように説明されています。
●保険業界全体が「顧客本位の業務運営」の実践を求められている中、生命保険乗合代理店・生命保険会社・消費者団体の代表等で構成される検討会(代理店業務品質のあり方等に関するスタディーグループ)にて、検討の上、消費者にとって理想的な代理店として求められる取組みを「業務品質評価基準」として、約200項目の基準をとりまとめました。
●代理店業務品質評価運営とは、生命保険協会が主体となり、「業務品質評価基準」に基づいて代理店の業務品質向上をサポートする、 消費者のための取組みです。
生命保険協会ホームページ「代理店業務品質評価運営とは」
https://www.seiho.or.jp/quality/about/
つまり「生保協会が主導する、消費者にとって“良い”保険代理店を定義・可視化するための取組み」です。
ポイントは消費者のためという点で、「これをしたら顧客本位な行動ですよ」という基準を「評価項目」として取りまとめ、それに基づいて保険代理店が評価される仕組みになっています。概要・ポイントは次の通りです。
Q)代理店業務品質評価運営とは何か?
A)生保協会主導の、消費者にとって“良い”保険代理店を可視化するための取組み
誰のため?:消費者のために、保険代理店の業務品質向上を生保協会がサポート
対象者は?:生命保険乗合代理店。一社専属・金融機関系などは対象外
何をする?:協会が代理店の業務品質を約200項目に沿って調査する
どうなる?:調査をクリアしたら「認定代理店」として協会ホームページで公表
「認定マーク」を自社ホームページや名刺等に活用できる生命保険協会>認定代理店とは>Q&A
https://www.seiho.or.jp/quality_result/qa/
なお、実際に調査を受ける場合は
自己チェック(※)→申込→利用料支払→調査(オフサイト→オンサイト)→一次評価(場合により再調査)→評価確定→認定!
の流れとなっています。詳しくは協会ホームページをご覧ください。
生命保険乗合代理店業務品質評価運営要領【初回調査編】
Ⅰ.初回調査>1.初回調査>(1)初回調査の流れ(P3)
https://www.seiho.or.jp/quality/pdf/uneisyokai.pdf
※:評価項目のうち「基本項目」の達成度を自社で確認し、達成できているor達成見込がある状態でないと本申込はできません。
経緯・背景
それでは、こうした制度が出来た背景から少し振り返ってみます。
保険業界で「顧客本位の業務運営」が重視されるようになって以来、保険会社も保険代理店に対して、
「顧客対応に漏れがないか?」
「アフターフォローは出来ているのか?」
といった業務品質の向上を求めるようになりました。
保険会社が代理店に支払う代理店手数料にも「品質手数料」などの項目が追加され、代理店は、顧客のためということに加え、(売上に直結する)代理店手数料の維持・向上という観点からも業務品質の向上が欠かせなくなってきました。
一方で、保険会社が代理店に求める“品質”のなかには
・「顧客本位の業務運営」に必ずしも即さないものも含まれている
・形式的に基準をクリアするだけでも評価されるようになっている
・保険会社によって項目がばらつき、特に乗合代理店は対応が多岐に渡り過ぎる etc.
といった課題もありました。
そこで、業務品質のあり方の調査・研究を目的として、2020年に協会内にスタディグループを設置。保険会社・保険代理店・消費者団体・金融庁などが委員として参加して検討を重ねた結果が「代理店業務品質評価基準」として約200の項目にまとめられたのです。
詳しくはこちらのコラムに記載しておりますのでご覧ください↓
ついに公開!生命保険協会スタディグループがまとめた代理店業務品質基準について「顧客対応」「アフターフォロー」「個人情報保護」「ガバナンス」の4カテゴリ―からなる約200の評価項目に基づいた認定が2022年度からスタート。
初年度は42社が認定(申込は54社)となりました。
https://www.seiho.or.jp/quality_result/list/なお、項目は継続して議論され、毎年少しずつ内容が変わっています。
例えば、2023年度は公的保険制度に関する項目が追加され、2024年度は次の項目が追加予定だそうです。
▼2024年度新設予定の設問
No.166 募集人個人の行う副業・兼業に関して、生命保険商品にかかる営業活動のなかで、副業・兼業を原因に結果としてお客さまからの信頼を損なうことのないよう、会社としての考え方やルールを明確に示すとともに、その理由等についての募集人への教育、副業・兼業の実態の定期的な確認などの仕組みを整備している。 追加理由 募集人個人が副業・兼業において行った行為であっても、その行為態様によっては保険募集と一体と見られる可能性があり、雇用者である代理店に対し責任が問われる恐れがあります。
募集人の不適切な副業・兼業によりお客様に被害が生じないよう、代理店として募集人の副業・兼業の管理が必要であることから設問を新設しております。
※2023年1月31日時点。これ以外にも項目の削除・追加・変更の可能性あり
(引用)生命保険協会ホームページ|代理店業務品質検討ワーキング・グループ
「2024年度評価基準見直し 追加変更案について」
https://www.seiho.or.jp/quality/wg/pdf/09_5.pdf金融庁の考え方
この評価運営の主体は生保協会ですが、監督官庁である金融庁がどういうスタンスかと言うと、次のように述べています。
「金融行政上の課題」
保険代理店は、直接の顧客接点として、顧客と保険会社をつなぐ重要な役割を担っているところ、保険代理店管理態勢の高度化を促していくことが必要である
金融庁「2023年 保険モニタリングレポート」‐P7
実は生保協会も、保険代理店が「業務品質評価基準」に基づいた自己チェックを通じてまずは自社の現在地を把握することを目指しています。
実際に取り組まれた代理店からは「申し込む前の段階からも協会に相談に乗ってもらえた」「アドバイザーの観点でやり取りをしてもらえた印象だった」というお話を当社もうかがいました。
「評価」や「認定」という言葉の響きもあってか、受験する⇔しない、合格⇔不合格、といった観点で捉えられがちかもしれませんが、金融庁や生保協会の発信からは
業務品質の高い保険代理店が増えることは、消費者にとって良い代理店が増えることであり、そのために代理店の品質向上をサポートしていく
といった姿勢が共通して感じられます。
認定代理店になるメリットは?
調査を希望する代理店は、利用料(税込30万円 ※年度によって変更の可能性有り)を負担します。さらに、評価項目を満たすためにシステムを導入したり、専門家に相談したりと、追加費用が発生するケースもあるかもしれません。
そこで、認定代理店になるメリットがどういった点にあるのか?あくまで仮説ベース・希望的観測の部分も含まれますがまとめてみました。
【確定していること】
1.協会ホームページに公表され、認定マークがもらえる
2.品質手数料が上がる(既に導入している保険会社多数)
3.保険会社の点検に対する手間が圧縮される
【今後の可能性・副次的効果】
1.メディアが取り上げる
2.顧客からの相談が増える(PR効果)
3.提携先からの信頼度が上がる(大手企業や会計事務所)
4.募集人が増える(リクルートしやすくなる)
5.乗合保険代理店の社会的地位が向上する
品質手数料が高まるなど直接的な効果の他、社会的な信用の向上や消費者・取引先・同業者に向けたブランディングといった副次的な効果も期待されています。
ちなみに、既に認定を受けた代理店からは
・保険会社の点検が軽減された
・調査を受ける過程で自社の業務品質のレベル感・現在地を客観的に把握できた
といった声がありました。
結果として認定されるかどうかだけでなく、こうした制度・仕組みが設けられ、それが標準化されていくこと自体に業界全体での業務品質向上の大きな意味があるようです。
認定代理店を一部紹介!
認定を受けた代理店の一覧はこちらです。
https://www.seiho.or.jp/quality_result/list/
このうち、当社の顧客管理システム「CSB」を利用している保険代理店から2社をピックアップして紹介致します。
1)株式会社保険ステーション
・募集人教育→士業と連携した勉強会、年間教育計画の作成、資格取得の推奨
・アフターフォロー→顧客への健康診断やがん検診の案内
・顧客対応態勢の整備→問合せや請求手続き、顧客情報の変化などはシステムで管理
・セキュリティ面でご苦労された部分もありつつ、自社の強み・弱みを再認識する機会となった
詳細は、協会製作の動画インタビューや、当社でも「CSB導入事例」とあわせてご紹介していますので、ご覧ください。
▼当社コラム|CSB導入事例
「朝、勤務を始めたらまずCSBを見ることが習慣化しています」
▼生命保険協会:動画インタビュー
「動画でわかる認定代理店#4 保険ステーション編」
2)株式会社ホロスプランニング
・自社開発システム(CSB)で情報を管理
-お客様のライフイベントを管理、通知機能でアフターフォローに活用
-苦情等の対応漏れが起きないようトリプルチェック体制
・募集品質で評価する体制を整備
・個人情報漏えい防止、ミーティング等を通じて社員への継続発信
▼ホロスプランニングホームページ
「乗合代理店業務品質調査の結果基本項目をすべて達成しました」
▼生命保険協会:動画インタビュー
「動画でわかる認定代理店#10 ホロスプランニング編」
調査を受ける上でのポイント
当社が、業務品質の調査を受けた複数の保険代理店様にお聞きした内容を元に、ポイントをお伝え致します。
「顧客対応」「アフターフォロー」「個人情報保護」「ガバナンス」の4大カテゴリー毎に、必要な準備と影響度(≒準備の大変さ・負担度合い)は表の通りです。
区分 | 主に準備が求められるもの | 影響 |
Ⅰ.顧客対応 | 規程・マニュアル 社内周知や教育をおこなった証跡 |
低 |
Ⅱ.アフターフォロー | 規程・マニュアル 社内周知や教育をおこなった証跡 発生した事象の分析、再発防止策の策定資料 |
中 |
Ⅲ.個人情報保護 | 規程・マニュアル セキュリティ関連のシステム導入 |
高 |
Ⅳ.ガバナンス | 募集人管理にとどまらず、一企業として求められる規程やコンプライアンス管理 |
中 |
Ⅰ顧客対応
保険募集に関わる規程・マニュアルなどは、体制整備義務が課され、以前から作成が求められている資料に近しいものが多く、この中では影響が比較的低め、としました。
Ⅱアフターフォロー
Ⅰに加え、発生した事象の分析、再発防止策の策定資料が必要です。新たに仕組づくりする場合、経営会議の議題化など、会社全体で検討すべき項目になるため、この中では影響が中程度としました。
Ⅲ個人情報保護
規程・マニュアル以外に、セキュリティ関連のシステム導入があるため、影響が高いといたしました。場合によっては、システムを導入したりコンサルタントに相談したりするケースもあるため、影響度を高く位置付けています。
また、取り組む上で「気を付けていたこと」について伺ったところ、
・規程やマニュアルが実態に沿っているか
・現場のオペレーションに齟齬や無理がないか
・自社にとってポイントとなる観点をもつ
例:「わかりやすさ」「募集人に負担がないか」
・社内意識の統一
などが挙げられます。
基準に則して理想的な代理店を目指す一方、絵にかいた餅となってしまっては本末転倒ですので、無理のない範囲で実施できるやり方を模索されたという声が多かったです。
社内意識の統一については、評価基準に対応していく以上、どうしてもルールを増やさざるを得ない側面もあり、ルールを単に負担と捉えるのではなく、営業も含めた全社員の意識のベクトルを揃えることが重要だったとのことです。
エルティヴィーでは、業務品質評価運営に関する情報提供を行っておりますので、
「業務品質評価運営について知りたい」
「認定代理店がどんな取組みをしたのかなど、事例を知りたい」
「CSBを活用した品質向上について知りたい」
と言った方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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